| < 活動報告・私たちの主張へ戻る |
|
党県連広報委員長:山本 龍
副政務調査会長:狩野 浩志 |
| |
|
副政務調査会長:
狩野浩志
プロフィールはこちら |
党県連広報委員長:
山本龍
|
| |
| 1.誰もが通いやすい病院として |
| |
前橋赤十字病院は、群馬県保健医療計画(註1)にもありますように、他の医療機関からの患者紹介率80%以上という要件を満たす「地域医療支援病院」として承認されており、二次保健医療圏における中核的病院と位置づけられております。その外来患者の70%以上を占める前橋市民にとって、前橋赤十字病院が前橋市の中心的位置に立地する現在の「市内どの地域からも行きやすい・かかりやすい病院」であることは非常に大切な要素であります。
次に前橋市の人口分布から見た場合、現在地がある本庁地区には、全人口の19,5%が居住し、また家屋の密集する地域を包含しており、災害に対する備えが十分ではないことから、高度救命救急機能を担う前橋赤十字病院の現在地での存在は、欠かせないと考えております。さらに前橋市消防本部が病院の直近に位置する事実や、血液センター、保健福祉事務所までが病院を中心とする位置関係に存在する理由もまた,現在地での建替えを考える上で無視されるべきではないと考えます。
|
| 2.超高齢化と人口減社会を目前にして |
| |
2035年における前橋市の人口は、2010年と比較して53,000人の減少、逆に65歳以上の老齢人口は20,000人増加して約10万人に達すると推計されております(註2)。老齢化率35,2%の社会の出現と核家族化の進行実態(註3)(成人した子どもとの同居率は1980年の70%弱から2005年には45%程度まで低下)を思うと、通院、入院の付き添い、見舞い等の利便性から、大規模病院は鉄道の駅に近い立地が求められると考えております。現在の前橋赤十字病院は、前橋駅から直線距離で1,2キロ程であり、また上毛電気鉄道の城東駅からも約700メートルと、両沿線住民にとっても利便性の高い重要な存在です。
次に、2002年における独居老人に主な交通手段を尋ねた厚生労働省のアンケートでは、複数回答可ではありますが、実に60%の人が「徒歩」と回答している現実をご存じでしょうか(註4)。次いで多かった回答は「バス・路面電車」であり、さらに続くのが「自転車」です。特に「自分で運転する自動車」という答えが、わずか12,9%であることは重要であると考えます。100人中35人が老齢となる近未来を考え、また少子高齢化の進行により運転免許証の保持者が減少していくことを考えますと、病院が駅に近いという現在の立地は極めて重要な要素であり、前橋赤十字病院が現在地で建て替えて発展することは、こうした未来のニーズに適合していると考えます。駅が近いということ、さらに官公庁からもさほど遠くないという立地は、行政が支えるさまざまな医療サービスの手続きなど病診連携の紹介患者にとっても利便性が高いということではないでしょうか。
|
| 3.持続可能な社会を目指す「コンパクトシティ」構想との整合性 |
| |
1980年代末、日米構造協議から生まれた流通業出店に関する規制緩和(註5)は、郊外における幹線道路沿いに全国どこでも同じ風景、すなわちロードサイド店舗の集積などをもたらしました。「ファスト風土」と揶揄される現象です。こうした現象に重ねて、住宅・学校・病院・官庁施設までが郊外に移転し、「新郊外」とでも表現するべき新たな町並みが次々と出現してきました。前橋市でも県立前橋工業高等学校や共愛学園の郊外転出が相次いだことはご承知のとおりです。一見、こうした開発の結果は都市の発展のように見えますが、実はクルマ社会の更なる進行をもたらし、石油資源の大量消費、CO2排出量の増大により大きな環境負荷を生じさせてきました。その一方で旧市街地のコミュニティは壊滅的な打撃を受け、特に前橋市の中心商店街は、衆議院国土交通委員会における「寂れた町」としての視察対象になるまで凋落したのです(註6)。
そこへ前述のような「人口減少・超高齢化社会」の出現です。この問題に対処するため、郊外への都市の拡散を抑制し、財政的・環境的負荷を減らして堅実な成長路線を歩む「スマートグロース」や国・県が提唱する「コンパクトシティ」構想が戦略として重要視されてきています(註7)。郊外への街の広がりは、道路や上下水道をはじめとするさまざまなインフラ整備の必要を生じさせ、さらにその維持管理費用が永続的に発生していきます。人口減と厳しい財政事情を勘案すればこそ、前橋市も都市計画マスタープランの中で「市民の高齢化や将来的な人口減少への対応、貴重な財産である良好な自然環境の次代への継承などが必要とされる本市では、既存ストックを有効活用しつつ様々な都市機能を計画的に集積させ、無秩序な市街地の拡大を抑制するコンパクトなまちづくりも重要です」(註8)と指摘しています。前橋市を第二の「夕張市」にしないためのプランと申し上げてよろしいでしょう。
こうした将来的なプランにとって障害となりかねないのが、公共施設の郊外移転であります。人の集まる施設を郊外に移せば必然的に周辺が開発され、社会基盤整備の圧力が高まりまるからです。前橋赤十字病院を公共施設として括って良いかという問題はあります。しかし巨額の税金が投入される以上、百貨店やショッピングモールの立地と同一視できない存在であることは確かであり、コンパクトシティ構想で論じられる公共施設の郊外移転問題では、市役所や文化施設などと共に病院の移転が検証されているケースが少なくありません(註9)。一旦郊外に移転したものを市街地に戻すことはコスト面から見て大きな困難が予想されます。先の総選挙において、現在の政権党が「歩いて暮らせるまちづくり」という力強いスローガンをポスターにして主張されていたことを鮮烈に思い起こしながら、前橋赤十字病院を現在地に残すということは、国の提唱するこれからのまちづくりに合致しうるという点を、強く受け止めて頂きたいと存じます。
ただ、当地区が区画整理地域の中にありながら、病院敷地の拡張を早い段階から事業に取り入れるという提唱がなされなかったことは真に残念でありました。かつて前橋赤十字病院関係者が敷地の拡張を真剣に考えていた時期があったにもかかわらず「まちづくりと大規模病院の在りかた」という観点から各関係者がこうした広い視野を持つ機会を得られなかったのはなぜか。時系列的検証を要する問題点であると考えます。
|
| 4.地元とともに歩んだ100年の歴史を更に未来へ |
| |
ここで、1913年この地に開院した前橋赤十字病院の敷地が、地権者から前橋市を通じて病院に寄付された事実を改めて確認させて頂きたいと思います。200人とも言われる協力された地権者の一世紀前の思い、すなわち地域の永続的発展の希求、そして医療機関の重要性に対する早くからの洞察力は賛嘆に値するものであります。爾来、地元住民は太平洋戦争末期の前橋空襲において、赤十字のマークゆえに地域が罹災を免れるなど、病院の存在に勇気づけられる一方で、現在と比較すれば衛生面における不安を覚えたであろう、かつての伝染病病棟の存在や、救急車のサイレン音・ドクターヘリの飛行音も受忍して参りました。病院の誘致、それは共同体の自己決定であり、社会の包摂力であり、地域は前橋赤十字病院とともに生きることを、自らの責任において受けいれてきたということであります。住む人の入れ替わりとともに、こうした受忍意識の変化がまったくないとまで断じることは出来ませんが、すくなくとも病院と地域の関係は、自明のそして暗黙の協力で成立してきたものであります。従って今後の前橋赤十字病院の在り方については、地域との協議が最優先されてしかるべき過去の歴史を、病院と地域の双方が共有していることを委員各位に再認識いただきたいと存じます。こうした要素もまた昨年12月前橋市議会本会議において、地域住民より出された前橋赤十字病院の現在地での建替えを要望した請願(添付資料参照)が採択された理由でありましょう。
私たち協議会は前橋赤十字病院の建替えと移転問題を、都市の在り方から考えてきました。一方、病院・医療関係者は将来における疾病構造の変化に対応する医療ニーズとその対応から、新たなハードウエア構築への努力をされておられると存じます。いずれに致しましても、計画した時点の建物や技術も、完成の時にはすでに先端性を失いつつあるという激しい変化の時代です。「群馬の中心たる前橋の未来と医療」この視点を大切に、絶えざる変化にどう対処するのかを互いに考えながら、前橋赤十字病院に、次の100年の歴史を先の100年同様、現在地で地域とともに築いて頂くことが、わたしたちの限りない熱望です。結びとなりますが、協議会の希望を書面にて披瀝する機会を頂いたことに感謝し、出発点の異なる私たちと病院双方の思いが、貴委員会において望ましい合致点を見いだされますよう衷心より期待しておりますことを申し上げ、協議会としての意見陳述を終了させて頂きます。
2009年12月9日 |
| |
註1・・・群馬県保健医療計画(平成17年3月)74頁
註2・・・国立社会保障・人口問題研究所の推計による(合併町村人口を含む)
註3・・・国立社会保障・人口問題研究所編集「日本の人口減少社会を読み解く」中央法規
註4・・・厚生労働省「一人暮らし高齢者に関する意識調査」2002年12月
註5・・・通商産業調査会「日米構造問題協議最終報告書」1990年(出典:東京大学田中研究室)
註6・・・衆議院会議録情報 第164回国会 国土交通委員会 第9号
註7・・・ぐんま県土整備ビジョン(平成18年11月)15頁〜17頁
註8・・・前橋市都市計画マスタープラン(平成21年3月)15頁
註9・・・中小企業白書https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h18/H18/html/i342000.html
矢作 弘・瀬田史彦著「中心市街地活性化 三法改正とまちづくり」学芸出版社
国土交通省都市・地域整備局企画専門官 脇山芳和「都市の活性化とまちづくり 第1章」
(首都大学東京 都市教養学部都市政策コース監修)公人の友社
鈴木 浩著「日本版コンパクトシティ〜地域循環型都市の構築」学陽書房
|